「膝に水がたまる」ってどういう状態?整形外科医に聞いた

「膝に水がたまる」ことに関するさまざまな疑問について、お茶の水セルクリニックの整形外科医・樋口淳也さんに聞きました。


Q.「膝に水がたまる」とはどのような状態のことをいうのでしょうか。

樋口さん「一般的にいわれる『膝に水がたまる』とは、関節内で潤滑剤の役割をしている『関節液』が、正常な量を超えて内部に貯留することを指し、医学的には『関節水腫(すいしゅ)』と呼びます。正常な関節液は透明な液体ですが、その原因によって色や性質、状態が変化します。

原因としては変形性関節症や関節リウマチ、痛風、偽痛風などが考えられます。膝関節内に関節液が多量にたまると、膝全体が腫れたような感覚がしたり、膝の屈伸運動に制限が出たりすることがあります。

また、こうした原因に対処せずに放置した場合、関節液の量が増えることがあります。ただしその場合でも、膝関節の容量には限界があるので、いくらでもたまるということはなく、関節内部の容量に応じて一定の量までにとどまることが多いです」


Q.膝に水がたまると、どうなるのですか。痛みはありますか。

樋口さん「軽度であれば、それ自体で痛みを感じることはありませんが、“膝のお皿の骨”といわれる『膝蓋骨(しつがいこつ)』が浮くほどたまってくると、可動域が制限されたり、痛みが出たりすることがあります。その場合は炎症が強く起きていることが多いため、膝の腫れ以外に赤みや熱感が出る場合があります」


Q.膝に水がたまりやすい人の特徴はありますか。

樋口さん「先述した、膝に水がたまる原因となる変形性関節症や関節リウマチなどは女性に多く、加齢とともに発症頻度が高くなるため、女性、あるいは高齢者でみられることが多くなります。体重が多いことも関与するので、カロリー過多の生活をしていることが一因となり得ます。一方で、痛風は不規則な生活や偏った食生活が原因で起こり、男性に多いのが特徴です」


Q.膝にたまった水は、抜いた方がよいのでしょうか。

樋口さん「関節液を抜くこと自体を治療行為として行う必要はありません。まずは『関節水腫がなぜ起こっているのか』という診断が重要なので、そのための検査として針を刺し、排液することがありますが、その結果として圧迫感や可動域制限が改善することもあります。

なお、関節水腫は、先述した変形性膝関節症、関節リウマチ、痛風といった、水がたまる原因となる病気の治療によって改善が期待されます。そのため、水自体を抜かずとも原因に正しく対処することで治療は可能です」


Q.膝に水がたまるのを予防することはできますか。

樋口さん「重要なのは正しい診断と、それに基づいた治療です。先述した疾患の発症を予防することで、膝に水がたまるのを予防することにつながります。変形性膝関節症を例にすると、日常生活では膝に負担をかけ過ぎないようにすることや、膝周りの筋力トレーニング、大腿四頭筋のストレッチなどが推奨されます。病状が改善しない場合には、整形外科医に相談し、薬物療法や理学療法を適切に行うことで、病態を改善させることが必要となるでしょう」

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