何となく不調な人は「伸び」の重要性を知らない

猫背になりやすい環境にいる現代人

長時間のデスクワークやスマホの閲覧などによって、現代人の多くは体をほとんど伸ばせていないのが現状です。また、「背筋がピンと伸びた鬱の人」はあまりいないように、ストレスを感じたり、悲しいことがあったり、悩み事があったりすると、人は自然と背中が丸まってしまいます。


多忙でストレスフルな現代人は、肉体的にも精神的にも猫背になりやすい環境にあるのです。だからこそ、意識的に体を伸ばすことが大事。縮こまった体をグ~ッと伸ばし、前かがみになろうとする体と心をコンディショニングするのです。



「伸ばさない」と、肩甲骨がズレて体が歪む

肩甲骨は本来、ほぼ左右対称に位置していますが、たとえば、猫背が習慣化している場合は、肩が内巻きになっていることで肩甲骨が左右に開いていきます。

また、体の使い方によって上下の位置がズレることもあります。

ズレた肩甲骨が固定化することで、姿勢が歪みます。その結果、筋肉の使い方がより一層アンバランスになり、体が本来持っている機能がどんどん損なわれていくという不調のスパイラルに陥ってしまうのです。



血流が阻害されてしまう

体を伸ばさずにいると、物理的な圧迫も加わります。

伸びていない状態、すなわち前かがみの状態にあると、まず、内臓が圧迫されます。窮屈な状態を強いられることによって、内臓は本来持っているパフォーマンスを発揮できなくなります。また、気道も圧迫されます。

空気の通り道が狭められて呼吸が浅くなり、全身の酸素量が低下します。


体を伸ばさないことによる物理的な圧迫は、血管にもあてはまります。

血管は全身に張り巡らされているため、腕を曲げているときは腕の血管も圧迫されますし、首が曲がっていれば首を走っている血管が、また、背中や腰が曲がっていれば、上半身と下半身をつないでいる大事な血管が圧迫されます。その結果、血液の通り道が狭くなり、血流が阻害されてしまうのです。


脳の重さは全身の約2%にすぎませんが、全身の約15%の血流が集中し、消費する酸素量は全身の25%にも及びます。それほど、脳はエネルギーを必要としているのです。


そのため、脳への血流が低下すると「集中力が続かない」「記憶力が低下する」「アイデアがひらめかない」など、多くのデメリットが生じます。長期的には、脳血管性認知症を発症するリスクも高まります。


したがって、肉体はもちろん脳の健康を保つためには、まずは気道の経路を確保して、酸素をしっかり取り入れること。そして、血流を促して酸素や栄養を供給することが非常に大切だと言えるでしょう。そのためにできることは、体をしっかり伸ばすこと。



小林 弘幸

順天堂大学医学部教授、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属イギリス王立小児病院外科、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導に携わる。また、順天堂大学に日本初の便秘外来を開設し、腸内環境を整えるストレッチを考案するなど、さまざまな形で健康な心と体の作り方を提案している。『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)、『死ぬまでボケない 小林式グーパー体操』(光文社)など著書多数。


https://toyokeizai.net/articles/-/396522


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スゴ伸び

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