うつ病、不安症になってない?「心の疲れ」6つのチェックポイント

環境変化で負荷がかかる心の健康に目を凝らして

新型コロナウイルスの流行により「新しい生活様式」が提唱されるなど、社会が大きな変化を迫られました。それに伴い、職場や家庭環境が大きく変わった方も多いのではないでしょうか。


環境が揺れ動く時期に気をつけたいのが「心の健康」です。特別疲れることをしていないのになぜか気持ちが暗くなる… …そんなことはありませんか? 今までは旅行で日常を離れたり、友達とのおしゃべりでストレスを発散していたりする人も多いでしょう。でも最近は、今までと同じ形で気分転換をすることが難しくなり、気分が塞いでしまうという声も耳にします。


心の疲れはなかなか自覚するのが難しいものです。ストレスがたまってきたなと感じたら、「どんな物事で気分が塞ぎ、何があると気分が晴れるのか」など、自分の心の動きをキャッチし、認識することが第一歩となります。私たちには、心の疲れを回復させる力が備わっています。この力は日々の暮らしに取り入れ習慣化することで、鍛えることもできます。ストレスが多い暮らしの中でも、心の回復力を高める習慣を身につけ、スーッと軽やかな日々を過ごしましょう。



<心の疲れをチェックしてみよう>

過去30日の間にどれくらいの頻度で次のことがありましたか。

(全くない=0点、少しだけ=1点、ときどき=2点、たいてい=3点、いつも=4点)


引用:大野裕他「一般人口中の精神疾患の簡便なスクリーニングに関する研究」

※うつ病や不安症の診断は、専門医による診察が必須です。このチェックリストはあくまで参考とし、心配な方は近隣の医療機関(精神科や心療内科など)を受診してください。


1.自分が神経過敏になっていると感じましたか? ( 点)


2.自分がそわそわ、落ち着かなくなっていると感じましたか?( 点)


3.気分が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じましたか? ( 点)


4.何をするのも面倒だと感じましたか?( 点)


5.絶望的だと感じましたか?( 点)


6.自分は価値のない人間だと感じましたか?( 点)



自分のことを「もっと知る」ことが心の疲れを取るファーストステップ

新しい出来事が起きた時、その捉え方には人それぞれの個性があります。楽観的な人がいれば心配性な人もいます。同じ人でもその時の体調などの影響を受けて捉え方が変化します。


環境の変化や新しい出来事に遭遇すると、人はまずマイナス面を認知する習性があります。人間は古の歴史の中で、新しい出来事に慎重になることで自分を脅かす存在を回避し、生命を維持してきたのです。しかし、マイナス面を認知した後、別の新しい情報をキャッチして整理していくことで、可能性や切り抜け方が見えてきます。マイナス思考は人間として自然なことですが、うつ病や不安症ではその思考から抜け出せず、苦しくなって生活に支障が出てくるのです。大野先生は「お互いに寄り添って自分の気持ちや考えを話し合い、別の視点を得ることで心が和らぐ。それが会話がもたらすよい影響です」と話します。


しかし新型コロナウイルスの影響もあり、今までのように人と気兼ねなく会話をするのが難しいのが現状です。そんな時に試してもらいたいのが、出来事と感情を関連づけてメモしていく方法です(図「7つのコラム」参照)。人と会えない時も、物事を客観的な視点で捉えることで、心の疲れの原因に気づくきっかけとなります。繰り返すことで悲観的な考えへのとらわれに気づき、心の疲れにも少しずつ対処できるようになります。



<「7つのコラム」の書き方>

落ち込みや不安がある時は、原因となることの発生から素直な思考を下の図の順番に書き出してみましょう。誰かに相談しているような客観的な視点を得るための方法の1つです。

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「笑う門には福来る」は本当! 行動が意識を変える

心が疲れると「もう何もしたくない」と無気力になることがあります。これ以上傷つかないように自分の中に閉じこもり、行動を起こさないようにしてしまうのです。心の疲れは精神のエネルギー不足の状態なので休息が必要なこともありますが「少し落ち着いたら、体を動かしてみると、心が上向きになっていきます」と大野先生。うつ病の治療の1つに「行動活性化」という方法があります。これは気分転換になる行動をとることで心を元気にする方法です。「脳は、行動をして初めて次のことをする意欲が湧くようになっています。気分を意識的に変えるのは難しいですが、行動はすぐにでも変えられる。まず行動すれば、心は後からついてくる。これが行動活性化です」。



<行動と心の関連メモ>

「朝起きて顔を洗い、朝食を食べた」。このような当たり前の生活には普段意識を向けないものです。しかし、日々の行動を意識すると「〇〇をしたら気分が明るくなることが多い」などの傾向が見えてくるはず。観察を繰り返していると「自分の気分を明るくする行動」が選び取れるようになるのです。日々のなんでもない行動が? と思うかもしれませんが、意外と行動と気持ちは連動しているもの。手帳やスマホで行動と心の動きをチェックして、新たな発見をしてみましょう!

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監修/大野 裕先生(おおの・ゆたか)

精神科医。1978年慶應義塾大学医学部卒業と同時に、同大学の精神神経学教室に入室。コーネル大学医学部、ペンシルべニア大学医学部を経て、慶應義塾大学教授を務めた後、2011年より独立行政法人(現・国立研究開発法人) 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター センター長に就任。現在は顧問。一般社団法人認知行動療法研修開発センター理事長などを務める。著書に、『心が晴れるノート』(創元社)など。


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