悪い姿勢が招く「隠れ酸欠」 呼吸筋ほぐして深い息に

呼吸が浅いと、空気が体に十分入らず、酸素と二酸化炭素を換気する効率が悪くなる。すると代謝が落ち、各臓器の働きが低下したり、疲れやすくなったりする。池袋大谷クリニック(東京・豊島)の大谷義夫院長は「血流も悪くなり、肩こりやむくみが起こりやすくなる」と話す。


呼吸は感情とのつながりも深い。東京有明医療大学の本間生夫学長は「浅い呼吸をしていると、不安やストレスを感じやすくなる」と話す。一連の心身の不調の背後に「隠れ酸欠」が潜むとみられる。


呼吸が浅い人が増えている一因として、スマートフォン(スマホ)の普及が挙げられる。多くの人はスマホ操作時に背中を丸め、肩が前に入り込んだ姿勢になりがちだ。「猫背や前かがみの姿勢は肺を圧迫し、息を深く吐いたり吸ったりできなくなる」(大谷院長)。浅い呼吸を改善するには、まずは姿勢をよくすることが大切だ。

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そのうえで、呼吸するときに動く筋肉に働きかける。呼吸時は、肺を収めている骨格「胸郭」の周りにある筋肉群「呼吸筋」が収縮する。本間学長は呼吸筋を柔らかくほぐすストレッチを薦める。「呼吸筋は加齢や悪い姿勢によって硬くなる。しなやかさを取り戻せば、深くゆったりした呼吸がしやすくなる」

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呼吸筋のなかでも、息を吸うときに使う筋肉の柔軟性を高めるには、背中と胸のストレッチが有効だ。足を肩幅に開いて立ち、背筋を伸ばす。胸の前で両手を組み、ゆっくりと鼻から息を吸いながら背中を丸め、腕を前に伸ばしていく。「胸に大きなボールを抱えるイメージで背中を丸めるのがコツ」(本間学長)。息を吸いきったら、口からゆっくりと吐きながら元の姿勢に戻ろう。


息を吐くときに使う筋肉は、肺の外側にある胸壁(きょうへき)と呼ばれる部位のストレッチでほぐすとよい。足を肩幅に開いて立ち、腰の後ろで両手を組んで、ゆっくりと鼻から息を吸う。吸いきったら、口からゆっくり吐きながら、組んだ両手を下へ伸ばしていく。


本間学長は「胸を張り、肩甲骨を中央に引き寄せるようにして」と助言する。1セット3~6回が目安。朝晩、昼休みなど一日のうちに何度か取り組むとよいだろう。


大谷院長のおすすめは、口すぼめ呼吸という呼吸法だ。「1、2」と数えながら鼻から息を吸い、「1、2、3、4」と数えながら口をすぼめてゆっくり息を吐く。吸う・吐くのセットを20回ほど繰り返そう。


口をすぼめて細く長く吐くと、呼吸回数が自然に減り、十分に息を吐ききることができる。その結果、深く息が吸えるようになる。副交感神経が優位になり、リラックス効果も得られるという。


ただし、強く口をすぼめると息切れする場合がある。大谷院長は「ロウソクの火を揺らす程度の強さで息を吐くのがポイント」と助言する。慣れるにつれ吐く時間を長くすると、より効果的だ。深い呼吸ができるように体を整えよう。


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